8月19日
2年以上、一度たりとも落ちたことのなかったエレジタットの城が落ちてしまう。
ルドルキア王国は3匹の呪竜よって崩壊の危機に陥った。
事実は認めねばならない。
本当の問題は落ちた後どうなるのか。
ならばどうする。
指をくわえて待っているのか。
否。
まだ落ちていない、まだ政権は変わっていない、まだ負けていない。
足掻いてみましょう、賭けてみましょう、勝てるかもしれないから。
チップの名は、『ルドルキア王国』。
賞品の名は、『エレジタット』。
ルールは簡単。
場所は正面玄関、時間は城が定められた状態に達した瞬間。
スタートの合図とともに外から全速力で正面玄関からゴール地点の王座を目指す。
途中、親衛隊という名の邪魔が入る障害物競走。
出走メンバーはルドルのチップを握り締めた方々数名、そして見知らぬ不特定多数。
見知らぬ方々はきっと息を殺してスタート時間を待っている…。
私は3人目の親衛隊に志願した。
不安がないといったら嘘だ。
見知らぬ無法者がやってくる可能性は高い。
また裏切りがあるかも知れぬ。
私にそんな輩を排除する実質的な力はない。
物理的な国防の要となると謳う組織の長を務めながら、敢えて城を明け渡す手助けをする。
これほど滑稽なこともなかろうて…。
それでも微笑みは絶やさない。
念願の親衛隊入りと軽口を叩く。
私などよりよほど辛い方がいるのだから。
さあ、時刻がやってきた。
擦れ違い際、それまでその位置にいらした第一師団長殿に目礼。
そして視線を上げた先は正面玄関入り口。
出迎えの準備は整った。
―国を賭けた大勝負の幕が開ける―