『探す者、知る者、待ち受ける者』


 「知りたいのか、彼女のことを?

  辿り着きたいのか、彼女の元へ?

  恐らくお前の望みは叶わぬと思うが

  教えるとしようか、私の知る限りを・・・」


 『地下への階段を地の底を目指すが如く下りて

  重苦しい鉄の扉の先にある、その密室

  彼女の空間、恐怖の研究室はそこにある

  灰色に閉ざされた、非情の世界

  こもった空気に混じる薬品と血の匂い

  天井から下げられた照明はやけに紅く

  机に散乱する冷たい医療器具を拾い上げる

  棚に並ベられた、哀れなるホルマリン漬けの生き物たち

  苦しみを浮かべる双眸が最期に見たのは悦に笑む部屋の主か

  手術室の中央にある手術台には落としえない血の跡

  幾多の命が弄ばれたことか、知る者は彼女一人

  着こなす白衣は返り血で紅く染まりかけ

  美しくも冷淡な面は遥かなる天の月を思わせる

  彼女は切り裂く、汚れたメスを急所まで

  彼女は打つ、古びた注射器で致死量を

  彼女は笑う、結果がどうあれ全ては終わるから』


  「さて、これが私の知る全て、後はお前次第だ

  場所はこの地図に記してある

  ・・・礼なら現金だけでいい

  最後に私から一つ、忠告だ

  くれぐれも彼女の好奇心の餌食にならんように・・・」




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